制作過程 その2

 

制作過程-1 の続きです。

この作品を作る過程です。

Eiji Yamamoto Photography

 

完成した背景はこちらです。ここに人物を載せます。

Eiji Yamamoto Photography

 

人物の写真は別に撮ります。

Eiji Yamamoto Photography

 

ただ単純に重ねるのではなく、人物の周辺をぼかしたり、消したりしていきます。人物とその周辺が残る感じでしょうか。場合によってははっきりとした境界線を作るために切り抜くこともあります。そして実際は人物の写真を重ねるのも一度だけでなく、平均すると大体3度は重ねています。いずれも背景画像の上に重ねていくのではなくて、背景画像の中に入れていく感じです。すると人物の上にも風景が載っていきます。不透明度を調整して3枚ほど重ねます。

Eiji Yamamoto Photography

 

並べるとこのような感じです。背景画像に合わせて人物のサイズも変更しています。

Eiji Yamamoto Photography

 

以前の印象派写真の作品シリーズでは、ここでひとまず完成でした。「ひとまず」というのはまだプリントが残っているからです。2015年、2016年に制作した合成のシリーズはここで完成となっています。今回、京都ポルタギャラリー華での展示では、そういった作品も数点展示しました。

これまではここで完成としていましたが、これでは人物に焦点が当たり、風景としてみたときに印象が弱くなってしまいます。そこで「Nostalgic harmony」では人物をシルエットにすることにしました。シルエットにするとモデルの人物の国籍や肌の色、年齢、表情も分からず、見た人の想像にゆだねられることになります。物語的な一枚としてはそちらの方が印象的だと思います。

そこで人物の写真をシルエットにします。いくつか方法がありますが、一つの方法としてまず人物を反転させます。

Eiji Yamamoto Photography

 

そして画像調整していくと真っ白なシルエットになります。

Eiji Yamamoto Photography

 

レイヤーの不透明度を調整します。

Eiji Yamamoto Photography

 

上の画像では、かかと部分が草の上にあるように見えるので、少し草の中にあるように見えるために、かかと部分をレイヤー調整します。

Eiji Yamamoto Photography

 

人物の画像は大体3枚ほど作って途中に挟み込んで背景と一体感を作って完成です。

Eiji Yamamoto Photography

 

ところで人物をシルエットにするときに注意すべき点があります。ポーズによってはシルエットに向かない画像があります。例えば次の一枚ですが、印象派写真シリーズとして気に入っている一枚です。実際は左後方にも別の建築が入っていますが、これは途中段階のものです。

Eiji Yamamoto Photography

 

この人物をシルエット化すると次の一枚になります。

Eiji Yamamoto Photography

 

並べるとこのような感じになります。つまりシルエットにする際に向いているポーズと向かないポーズがあるということです。

Eiji Yamamoto Photography

 

制作にかかる時間ですが、制作している途中で、そこから幾つかの作品に枝分かれしていくこともあり、さらにそこから再度枝分かれして別作品になることもあります。完成だと思っても何かしら引っ掛かりを感じるときは納得いくまで作り直しています。ある程度の時間を空けて、再度見直すことも多く、実際に一枚当たりどれほどの時間がかかっているのか全く分かりません。ですが、これから新しい作品を作っていく場合、すでに手元にたくさんの写真があると考えて、漠然とした見通しで背景画像だけで2週間は見る感じでしょうか。そこに人物の撮影などを含めるとさらに1週間。あくまで漠然とした感じですが一枚当たりの制作時間は約3週間といった感じです。しかし枝分かれの結果、同時に複数の作品が生まれる可能性もあります。

 

このような過程で「Nostalgic harmony」の作品を作っています。最初にも記載しましたが、一作品につき、30-50枚の写真を重ねて使用しています。

 

ところでこの作品シリーズのモデルは女性にお願いしています。髪の毛が風に流れたり、後ろで結んだり、またスカートやワンピースが風になびいたり、ふんわりとしていたり。そういった光景が画になると思い、複数の方にモデルをお願いしました。国籍もばらばらですが、シルエットにするとそれも分かりません。結果、一つの統一感ができたのは良かったと思います。モデルの方々や撮影時のお世話になった皆様、どうもありがとうございます。

 

制作過程-3に続きます。こちらはプリントに関してです。制作過程-1はこちら